3章 胆管症例1

症 例
85歳,女性.腹部全体痛,嘔気,嘔吐.
【現病歴】本日朝より突然の腹痛が出現.嘔気があり,1回嘔吐し外来受診.
【既往歴,併存症】胆石でフォロー中
体温 35.8度,右側腹部から下腹部に軽度の圧痛を認めた.
T-Bil 1.3 mg/dL,AST(GOT) 220U/L,ALT(GPT) 92U/L,WBC 7,400/μL,CRP 0. 1mg/dL,P-Amy 48U/L

DICOM画像にはCTとMRCP,ERCPがありますが,CT画像で診断してください.

Step1背景の6つの間接所見を確認

病態の絞り込み

1) Free air(穿孔系) (-)
2) 胃・小腸・大腸の液貯留(閉塞・捻転系,炎症・血流障害系)
①胃 (-)
②空腸領域 少量(+)
③回腸領域 回腸末端にごく少量(+)
④盲腸 便中に少量(+)
⑤下行結腸 (-)
⑥直腸 (-)
3) 腹腔内出血 (-)

「病態&臓器」の絞り込み

  1. 腸管の閉塞・捻転
  2. 穿孔
  3. 腹腔内出血
  4. 腸管の炎症・血流障害系+非腸管臓器

④腸管の炎症・血流障害系+非腸管臓器を選択します

重症度判定

4) 腹水(出血)(腹腔内の広がり,出血量の評価) (-)
5) IVC虚脱(全身への影響,脱水・輸液量の評価) (-)

原因部位の同定(特急券)

6) Dirty fat sign(問題部位近傍) (-)
7) 腸管浮腫(直接所見のことあり) (-)
8) 血液・血腫 (-)

Step2「読み型」を決め,アルゴリズムに沿って読影

2a. 病態単独型

①腸管単独型:腸管閉塞・捻転
②腸管優先全臓器型:穿孔→腸管を先に読む
③非腸管優先全臓器型:腹腔内出血→非腸管臓器を先に読む

2b. 病態・臓器複合型

④臨床判断型:腸管炎症・血流障害+非腸管臓器
→非腸管臓器と腸管読影の読む順番は臨床的に判断する

※特急券(dirty fat sign,腸管浮腫,血液・血腫)があれば狙い撃ち読影
不明時は残りをルーチン読影する

本症例は2b④となります.

腸管・非腸管臓のどちらから読んでもよいですが,胆石があることと肝機能の上昇があり肝[胆膵コンボ+脾臓]を読影することにします.

[肝胆膵コンボ+脾臓アルゴリズム]は以下になります.

1.Dirty fat sign,腸管浮腫近傍,血性腹水の狙い撃ち読影

狙い撃ち読影はできません.

2.肝実質

①腫瘍(出血,圧排),②感染,③急性肝炎

肝実質に病変を認めません.

3.胆道系+膵管

④閉塞(結石・腫瘍),⑤感染,⑥胆道気腫

胆嚢腫大(長軸径>8cm,短軸径 >4cm)は認めませんが,胆嚢壁は浮腫を伴い肥厚(>4mm)を認めます.胆嚢は腹壁に広く接していますがtensile gallbladder fundus signは認めません.1cm以上ある胆石と,複数の細かな胆石を認めます.総胆管は8mm以下で拡張していませんが、単純CT(30スライス)で総胆管の十二指腸乳頭近くに結石が陥頓しています(図1,黄色矢印).膵管に病変は認めません.

4.膵実質

⑦膵炎,⑧腫瘍

膵実質に病変は認めません.

5.脈管系

門脈系:⑨血栓,⑩門脈内ガス
腹腔動脈系:⑪動脈瘤,⑫出血

脈管系に病変は認めません.

6.脾臓

脾臓に病変は認めません.

両側腎嚢胞を認め,子宮は摘出後です.その他の非腸管臓器に病変を認めません.腸管には病変を認めません.

診 断

総胆管結石,慢性胆嚢炎(胆石あり)

造影CTでは,総胆管内の胆石は周辺臓器が造影されることでマスクされています.肝障害がある場合,総胆管結石の可能性がありますので,単純CTで胆管内の胆石を十二指腸乳頭まで確認してください.MRCP(画像MR)でも総胆管下部に結石による欠損像を認めます(図2,赤矢印).
また,十二指腸乳頭に胆石が陥頓している場合は,胆石性膵炎の併発も念頭に置く必要があります.本症例では膵管の拡張もなく胆石性膵炎は合併していませんでしたので,C点での閉塞でした.
なお,胆嚢は壁肥厚ありますが緊満感に欠いており,慢性の胆嚢炎でした.

本症例は感染兆候がないため,入院後翌日にERCP(図3,画像RF)を施行し切石し,軽快退院しました.細かな胆石が胆嚢内にあり,再発予防のために後日待機的に胆嚢摘出術を施行しました.
このような症例に対して,急性胆嚢炎と診断して当日緊急手術をすることのないように努めてください.