症例11

疾患名・解説
症 例
30歳代・女性 胸痛と倦怠感出現

Step2

診断名を見て、再度画像診断を検討してください

診断:先天性気管支閉鎖症、自然気胸
(congenital bronchial atresia, spontaneous pneumothorax)

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Step3

CT所見、用語(解剖)解説と病変所見のあるキー画像

キー画像の右側の“>”をクリックすると画像上の重要所見に矢印マークが現れ、さらに“>”をクリックすると所見のコメントが現れます。Thin-slice画像や白黒反転での読影にも挑戦してください。


画像所見の解説

CT所見

気管支、肺野
1.左胸部には気胸を認める。左上葉の肺尖部には胸膜直下のブラを認める。
2.左肺上葉上区域は過膨張し、気腫性変化を認める。肺血管も細小化している。
3.上区の肺門側には軟部濃度域の樹枝状構造物が見られ、造影CTでは低吸収域を呈している。気管支内粘液貯留が疑われる。
4.上区支の起始部・近位部を確認できない。気管支閉鎖を疑う。

【経過】
気管支内視鏡検査では、左上区支の開口部は確認できず。
気胸が軽快しないため、胸腔鏡下にて左上区域切除術施行。

【病理診断】
先天性気管支閉鎖、粘液貯留


キー画像1 冠状断で観察

気胸、上葉上区域のエアートラッピングと肺血管狭小化、気管支内粘液貯留、上区気管支欠損

・左胸部に気胸、左肺尖部にはブラがある。
・左上葉上区域の過膨張、エアートラッピングと肺血管も細小化。
・左上葉の肺門部近傍に樹枝状の低吸収域の異常構造物:閉鎖気管支の末梢側の粘液貯留。
・上区支の起始部・近位部を確認できない。上区支の近位部気管支の欠損。


キー画像2-1 軸位断で観察

気胸、上葉上区域のエアートラッピングと肺血管狭小化、気管支内粘液貯留

・左胸部に気胸、左肺尖部にはブラがある。
・左上葉上区域の過膨張、エアートラッピングと肺血管も細小化。
・左上葉の肺門部近傍に樹枝状の低吸収域の異常構造物:閉鎖気管支の末梢側の粘液貯留。

キー画像2-2 軸位断で観察


キー画像3 補助画像:MinIPと3D-CTA(VR)

軸位断CTから気管支を観察するためのMinIP (minimum intensity projection)と、肺血管を観察するための3D-CT angiography (3D-CTA:volume rendering) を作成。

MinIP (最小値投影法)

...

・左上葉上区域の過膨張、エアートラッピング
・左上葉上区支は欠損

3D-CTA (VR)

...

・左上葉上区域の肺血管の細小化と減弱


キー画像4 胸部単純写真

左肺に気胸を認める。また左上肺野は透過性が亢進し、血管影は減弱している。
左肺門部の上部に結節影が疑われる。

Step4

疾病の解説と所見のまとめを見た後、再度画像診断を検討してください

本症の解説

先天性気管支閉鎖症

・気管支の先天性異常で、区域・亜区域気管支や肺葉気管支の近位部が先天的に閉鎖している病態。
・気管支の閉鎖部の末梢側(遠位部)の気管支や肺組織は正常に形成されている。その気管支には分泌液が貯留するとともに、気管支の拡張も伴う。
・閉鎖気管支が支配する肺には、側副孔を介して空気が流入する。しかし近位部気管支が閉塞しているため、肺はエアートラッピングの状態になる。
・症状は無症状のことが多い。まれに気胸や感染の合併が報告されている。通常は、健診などで偶然発見される。
・好発部位は左上葉の上区枝で、右上葉気管支、右中葉気管支、両側下葉B6や肺底区域支にも見られる。


先天性気管支閉鎖症の胸部CT所見のまとめ

1.近位部気管支の欠損:
病変部の気管支の近位部が確認できない。通常存在すべき気管支が盲端になっていたり、起始部が確認できないことを冠状断や3D再構築画像で確認する。
2.閉鎖気管支の末梢側の粘液貯留:
・気管支閉鎖部位より末梢の気管支に拡張と粘液貯留、粘液栓を認める。
・貯留した粘液は重力に従って分布する。このため上葉気管支の閉塞では粘液が下方の閉鎖部にせき止められるように貯留するので、肺門部近傍の結節影やfinger-in-glove様の所見を呈する。下葉肺底区域支の閉鎖では粘液は閉鎖部と離れて足側の末梢側に貯留し管状・棒状・樹枝状影を呈する。これらは粘液であるため造影効果は認められない。
・貯留した粘液は拡張した気管支内でair-fluid levelを呈したり、長期にわたって存在するので石灰化を来すことがある。
3.区域性・亜区域性・肺葉性の過膨張・エアートラッピングと肺血管の細小化:
閉鎖気管支が支配する肺は側副孔からのエアードリフトで気腫状になり、またこの領域の肺血管は換気不全に伴い狭小化を来す。このため、CTでは粘液の貯留した気管支を取り囲むようにして、区域性・亜区域性・肺葉性の過膨張・エアートラッピングと肺血管の細小化の所見が得られる。
4.末梢気管支の拡張や嚢胞形成:
気管支閉鎖と先天性嚢胞性腺腫様奇形(congenital cystic adenomatoid malformation:CCAM)の関連(随伴・併存)が報告されている。このため末梢側に嚢胞形成やブラを伴うことがある。

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