症例06

疾患名・解説
症 例
50歳代・男性 咳、喀痰

Step2

診断名を見て、再度画像診断を検討してください

診断:気管支カルチノイド
(bronchial carcinoid)

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Step3

CT所見、用語(解剖)解説と病変所見のあるキー画像

キー画像の右側の“>”をクリックすると画像上の重要所見に矢印マークが現れ、さらに“>”をクリックすると所見のコメントが現れます。Thin-slice画像や白黒反転での読影にも挑戦してください。


画像所見の解説

CT所見

気管支、肺野
1.右下肺葉S6bに20mm大の境界明瞭な球形の結節病変を認め、B6b気管支内腔に連続性の進展を認める。
2.右B6bは閉塞し、閉塞部には棒状樹枝状の軟部組織濃度で気管支径の拡大を認め、finger-in-glove sign様である。
3.ダイナミック造影CTでは、結節病変と樹枝状のB6b閉塞病変とも均一な早期の造影増強効果(単純38HU、早期相87HU、後期相63HU)が見られ、腫瘍性病変である。
4.S6bの肺野濃度は軽度低下している(エアートラッピング)。またB6bの末梢に軽度の樹枝状の粘液栓が見られる。
5.肺全体で気管支の軽度の壁肥厚が見られ、気管、主気管支や区域気管支に軽微な粘液付着を認める。また右上葉には気腫性変化を認める。慢性気管支炎と気腫性変化を来している喫煙肺である。


キー画像1 気管支カルチノイド

右下肺葉S6bに20mm大の境界明瞭な球形の結節病変を認め、B6b気管支内腔に連続性の進展を認める。
右B6bは閉塞し、閉塞部には棒状樹枝状の軟部組織濃度で気管支径の拡大を認め、finger-in-glove sign様である。


キー画像2 MPR

結節病変とB6b閉塞病変は連続し、一連の腫瘍性病変。気管支B6bは腫瘍により閉塞し、腫瘍部では気管支径の拡大あり。


キー画像3 気管支カルチノイド

...

右S6の結節病変は多血性(単純38HU、早期相87HU、後期相63HU)で均一に造影増強され、充実性腫瘍であることがわかる(粘液栓塞の場合には造影増強が見られない)。

キー画像4

結節病変とB6b閉塞病変には同様の造影増強が見られる。一連の腫瘍性病変である。


キー画像5 気管支内腫瘍の周囲肺組織の変化

気管支内腫瘍でB6bは閉塞し、肺野S6bではエアートラッピングによる肺野濃度低下が見られる。


キー画像6 喫煙による肺病変:気腫性変化

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右上葉には気腫性変化を認める。胸膜に接する気腫性病変は傍隔壁性肺気腫である。

キー画像7 喫煙による肺病変:慢性気管支炎、粘液栓(mucous-plug)

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肺全体で気管支の軽度の壁肥厚が見られ、左下肺には気管支粘液栓と炎症性変化を認める。


そのほかのCT所見

1.左副腎に、Φ35mm大の腫瘤あり。内部densityは、単純CTで水濃度よりも低く(-19HU) 、造影CTで不均一な軽度の造影効果(43HU)が認められる。副腎腺腫(非機能性)である(Follow-upで変化なし)。
2.肝内には微小な嚢胞が散見。

キー画像8 副腎腫瘍:皮質腺腫

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左副腎に、Φ35mm大の腫瘤あり。内部densityは、単純CTで水濃度よりも低く(-19HU) 、造影CTで不均一な軽度の造影効果(43HU)が認められる。副腎腺腫(非機能性)である。

Step4

疾病の解説と所見のまとめを見た後、再度画像診断を検討してください

本症の解説

気管支・肺カルチノイド

神経内分泌腫瘍で、一般的に低悪性度の腫瘍である。 発育は緩徐であるが、なかには悪性度の高いものもある。発生部位によって中枢型と末梢型に分類される。
中枢型は、主気管支から亜区域支までの太い気管支や気管に発生するタイプで、血痰、咳や肺炎症状、気管支閉塞症状を主症状とする。気管支内腔に突出するように発育することが多く、気管支・肺カルチノイド腫瘍の大半を占める。
末梢型は肺野の結節影として発生するタイプで通常無症状である。

模式図 気管支・肺カルチノイド

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用語解説【メモ1:気管気管支内腫瘍は”CAMP”】

気管気管支内に発育する腫瘍の覚え方は、代表的な組織型の頭文字を並べて”CAMP”と呼称している。
C:carcinoid;
A:adenoid cystic carcinoma;
M:mucoepidermoid carcinoma;
P:pleomorphic adenoma
しかし、実際には臨床上”CAMP”の中でCarcinoidを除き”AMP”は比較的稀な腫瘍群である。carcinoidよりも頻度の高い気管支内腫瘍は、悪性腫瘍ではSquamous cell carcinomaやsmall cell carcinomaである。
他の気管支内腫瘍としては、気管支内転移(乳癌、大腸癌、腎癌、肺癌、悪性黒色腫など)、良性腫瘍ではHamartoma、Papilloma、Leiomyoma、Lipoma、Schwannoma などが挙がる。

用語解説【メモ2:気管支内腫瘍と粘液栓塞の鑑別】

気管支内の占拠性病変には腫瘍と粘液栓塞がある。両者をCT画像で鑑別するには、形態・単純CTの濃度・造影増強パターンの3つの情報を総合しておこなう。
腫瘍に特徴的なCT所見は、形態:気管支径を越える大きさのポリープ状・鋳型状の結節、単純CT:軟部組織濃度や脂肪濃度、造影増強パターン:造影早期または後期相でCT値の上昇・均一〜不均一な増強である。
造影増強が軽微で両者の鑑別が困難な場合には、MR画像(造影MRを含む)を追加するのがよい。MRでは粘液栓塞は液体の信号強度を呈し、腫瘍は軟部組織や脂肪組織に特徴的な信号強度として鑑別可能である。

気管支カルチノイドのCT所見のまとめ

【メモ1:気管気管支内腫瘍は”CAMP”】
1.気管支内結節、肺門部結節:形状は球形で、境界明瞭、辺縁平滑、もしくはやや分葉状を呈する。しばしば気管支内にポリープ状・鋳型状に突出する。
2.腫瘍の性状:軟部組織濃度を呈し、石灰化を伴うことがある。造影増強効果は通常高度である。
3.随伴所見:関連の末梢肺に無気肺・エアートラッピング・閉塞性肺炎を伴い、末梢側の気管支に粘液栓塞や小葉中心性の粒状影が見られる。

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