症例08

疾患名・解説
症 例
70歳代・女性 咳嗽、血痰、微熱

Step2

診断名を見て、再度画像診断を検討してください

診断:気管気管支結核、気道散布性肺結核
(Tracheobronchial tuberculosis, Transbronchial spread)

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Step3

CT所見、用語(解剖)解説と病変所見のあるキー画像

キー画像の右側の“>”をクリックすると画像上の重要所見に矢印マークが現れ、さらに“>”をクリックすると所見のコメントが現れます。Thin-slice画像や白黒反転での読影にも挑戦してください。


画像所見の解説

CT所見

気管支、肺野
1.肺野では、左上葉の肺尖(S1+2)や下葉S10を中心に、細葉、小葉中心性の境界明瞭な粒状影と連続する樹枝状影(tree-in-bud sign)、粘液栓・粘液栓塞による棍棒状・樹枝状影(finger-in-glove sign)と、結節性病変が多数見られる。
2.気管支では、左上葉気管支と左上区支の壁肥厚と内腔の狭窄が見られ、それを取り囲む腫瘤形成が見られる。またボタローリンパ節(大動脈下リンパ節)の腫大を伴っている。
3.下葉気管支はB10の閉塞と棍棒状、分岐状影が見られる。

そのほかのCT所見
Th3椎体に10mm大の円形の低濃度域あり。内部に点状の高濃度域の集簇(polka-dot-sign)が見られる。脊椎血管腫である。


キー画像1 Tree-in-bud sign


キー画像2 左上区支壁肥厚・内腔狭窄


キー画像3 下葉B10気管支閉塞、粒状、結節性病変


キー画像4 上葉気管支壁肥厚、上区支壁肥厚・内腔狭窄 tree-in-bud sign


キー画像5 下葉B10気管支壁肥厚・内腔狭窄


キー画像6 上葉気管支壁肥厚、上区支壁肥厚・内腔狭窄、tree-in-bud sign、リンパ節腫大


キー画像7 そのほかのCT所見:Th3 脊椎血管腫

Th3椎体に10mm大の円形の低濃度域あり。内部に点状の高濃度域の集簇(polka-dot-sign)が見られる。脊椎血管腫である。


用語解説【tree-in-bud sign】

・細気管支が分岐線状影・樹枝状影を示し小葉中心性の小さな結節と連続して、ちょうど“tree-in-bud”(芽吹いた木の枝)のように見えることから付けられた病的な細気管支を示すサイン。二次小葉の中央部にある末梢の細気管支の内腔に粘液や、膿・液体、乾酪壊死物質などが充満することにより正常では見えない末梢気道の分枝構造が可視化・明瞭化し、これに末梢気道の拡張や壁肥厚と気管支周囲の炎症が加わった状態である。
・発表された当初は、このサインは活動性肺結核の経気管支散布像を示すパターンとして報告されたが、その後、肺結核のみではなく種々の細気管支病変を伴う疾患(非定型抗酸菌症、マイコプラズマ肺炎、細菌性肺炎、びまん性汎細気管支炎、びまん性嚥下性細気管支炎など)で見られることが判明した。
・肺結核では、このサインは気道散布性の活動性肺結核を示唆する。

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Step4

疾病の解説と所見のまとめを見た後、再度画像診断を検討してください

本症の解説

気管気管支結核と気道散布性肺結核

【気管気管支結核】
・亜区域気管支よりも中枢側の気管支壁に生じる結核病変で、気管支結核(endobronchial tuberculosis)とも呼ばれている。
・リンパ節炎や肺野病変の直接波及、経気道的な結核菌の生着により、気管支壁に炎症、肉芽腫性変化、潰瘍、狭窄などを来す。大量排菌の頻度も高い。
・治癒後に気管・気管支に高度の瘢痕狭窄を高率に来す。
・CTでは、気管壁肥厚、周囲の腫瘤形成、気管内隆起性病変、内腔狭窄、近傍のリンパ節腫大などを認める。

【気道散布性の活動性肺結核】
・気道散布は二次結核の典型的な発症進展形式である。乾酪物質が呼吸細気管支以下の末梢気道内を充填し、終末細気管支、呼吸細気管支、肺胞道の内腔およびその周囲の肺胞に乾酪性肉芽腫性病変が形成される。
・上葉の肺尖部(右S1,S2,左S1+2)や下肺の背側区域(S6,S10)に好発する。
・ CTでは線状、分岐状、粒状陰影(tree-in-bud sign)を認め、これらの病変は細気管支内の膿や乾酪壊死組織で充満しているため、濃度がやや高いことが特徴。
・区域性、大葉性の均等な肺胞性陰影(乾酪性肺炎)や液体貯留のない空洞を伴うこともある。


解説:気管支結核を確認する画像検査

気管支鏡所見
左主気管支から上葉気管支を観察:
左主気管支分岐部に発赤とクリーム状の白苔を認め、上区支は高度に狭窄。この部の気管支洗浄液の抗酸菌塗抹とPCRで結核菌陽性。気管支結核と診断確認。

キー画像8 気管支鏡所見

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気道散布性の肺結核のCT所見のまとめ

1.上葉(肺尖部)、下葉背側優位の病変分布。
2.Tree-in-bud sign(気道散布像):細葉中心、小葉中心性の分岐状粒状影(乾酪壊死充填により高コントラスト・高吸収域)。
3.乾酪性肺炎:区域性、大葉性の浸潤影(乾酪性肺炎)。集簇する微細結節性病変(細葉性結節)も見られる。
4.空洞性病変。
5.気管気管支結核:気管支壁肥厚と内腔の狭小化。

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