症例10

疾患名・解説
症 例
70歳代・男性 労作時呼吸困難

Step3

その後解説を見て、再度画像診断を検討して下さい

診断:特発性上葉収縮性線維症+非特異的間質性肺炎
(Idiopathic Pleuroparenchymal Fibroelastosis with Non-specific Interstitial Pneumonia (i-PPFE with NSIP))


画像所見の解説

胸部X線写真

胸椎側弯が見られる。
両側肺尖では胸膜直下に不整形陰影が並び、両側肺門は挙上。
両側下肺野にも網状影を認める。

CT像

両側肺尖~上肺野では胸膜直下に比較的Compactで内部に拡張した細気管支透亮像を有するconsolidationが並ぶ。胸膜からのびるやや太い線状影も認める。
両側上葉はloss of volumeを示している。いわゆる無気肺硬化像である。
また両側肺底では不均等に広がる網状影を認める。陰影内部には著明な牽引性気管支拡張を伴う。


本症の解説

病理組織像

診断確定のため、右肺S2とS10より外科的生検が施行された。
右肺S2の組織像(A)は、pleuroparenchymal fibroelastosisにS10(B)は、UIPに合致するものであった。

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全般

PPFEは、LIPとともにATS-ERS2013年のコンセンサス分類では稀な特発性間質性肺炎群に分類された(1)。
PPFEは肺尖胸膜直下の弾性線維の増生を特徴とする疾患であり、組織学的にはapical cap fibrosisと同等である。
有症状ないし進行性の時はPPFE、無症状の時はapical cap fibrosisとなる。
胸膜病変は乏しく、肺内病変が主体である。PPFEのみのものと、下肺野にUIP、NSIPを伴うものとがある(2)。
本疾患は本邦の網谷病を拡張したものであり、網谷病とは体型が細身で扁平な胸郭を有する中高年に多く、10-20年の経過で緩徐に進行し経過中に両側の上葉は著しく縮小する。
しばしば、気胸を合併する。
いわゆる“apical cap”が進行するものと捉えらえている(3)。
まとまった画像所見の報告は乏しいが、上肺野の胸膜直下に拡張した細気管支の透亮像を伴う小さなconsolidationが散見され、上葉は収縮し、しばしば肺尖に粗大なのう胞を伴う。気胸を伴うことも多い(4)。
同様な病態は、塵肺症、慢性過敏性肺炎、RAや強直性脊椎炎でも見られ、また特発性の場合でも60%に感染の既往が知られている(2)。
本疾患の病理像は経気道性に進展する疾患のend stageを反映する可能性も示唆される。

参考文献:文献へのリンク付

2015-04-01
本症例は「症例画像データベース」に登録されました。